マヘリア・ジャクソン-クリスマス特集(12月22日)2007年12月22日 17時44分52秒

 「Evening cafe 135」マスターのアッシーです。
 今日は冬至。そして数日後はクリスマス!

 12月22日(土)18時からFM熱海湯河原で放送した僕らの音楽トーク番組「Evening cafe 135」」の、素敵な曲の紹介です。

【1.Merry Christmas (Larry Carlton)】
【2.White Christmas (Larry Carlton)】
8.何ちゃらトーク
 【Walking in the winter wonder land (Larry Carlton)】
9.【The little drummer boy (Larry Carlton)】

 収録アルバム「Christmas at my house」。先週もかけたラリー・カールトン名義の1989年のクリスマス・アルバムからの曲たちです。どれも有名な曲なので敢えて説明する迄もないとは思いますが、最後の「The little drummer boy」だけはラリー・カールトンのギターの出だしが異様にブルージーで全くの別物でした。歌のメロディ部分がギターで聞こえるまでは、「これは一体何の曲?」と皆さんも皆目分からなかったことと思います。

 僕はこの「The little drummer boy」が昔から好きで、でもタイトルが分からず困っていましたが、ドラムスの歌だったのね。あの「パー・ラパパン・パアーーン」と、曲中で20回くらい繰り返す擬声語は、ドラマーのスネアの音だったのですね。
 この曲は出来たのは1958年と、ものすごく最近です。歌詞によるとこの曲は、イエスが生まれた時代に彼の地で生きていた貧しい羊飼いの少年が主人公です。彼が風の噂でイエスが誕生したと知り、「僕は貧しくて、イエス様が生まれたお祝いに差し上げられるものが何にもないので、代わりに大好きな太鼓を叩いて、救世主の誕生をお祝い致します。」という内容なのだそうです。くーっ、泣かせるぜ少年!(生きてれば二千歳)

 歌詞はこんなあらすじです。実際の歌では歌詞の各行の後ろに全て、「パー ラパパン パーーン!」と入ります(スネアのヒット音の擬声語です)。英語では各行の後ろの韻を揃えていますが、僕は日本語のリズムの真骨頂である「五七調」で訳しております。意味は合ってると思います。何故か途中で九州弁になっております(リズムを合わせる為で、意味なし)。


 小さな太鼓ボーイ (訳詞 アッシー)

 風の噂に聞きました
 僕らの王が生まれたと
 この世でベストの贈り物
 王と一緒に生きること

 かわいいかわいい 赤ん坊
 僕は貧しい子供じゃけん
 贈り物など無いけれど
 これこそ心の贈り物
 
 貴方の為にこの太鼓
 演奏してもよかですか?

 羊のメアリーうなずいて
 雄牛と子羊 足鳴らす
 僕の太鼓は君にこそ
 あらん限りに叩きます
 
 あれれ 赤ちゃん 笑ったよ
 僕と太鼓も 笑ったよ


【3.Ark the herald angels sing (Take 6)】
 収録アルバムは先週もかけた「He is Christmas」。ここのHeは「彼」(代名詞)ではなく、「救世主」という固有名詞ですので、ここでは文の冒頭にあるが、真ん中に来てもどこでも大文字で始まります。この曲は邦題では「あまにはさかえ(天には栄え)」と言うそうです(賛美歌98番)。わっかりにくい古語ですね。新しく出版された賛美歌では21番となり、邦題も原語に近い「聞け、天使の歌」となっています(原題の意味は「天使のお告げの歌を傾聴せよ」)。彼らTake 6(テイク・シックス。「タケロク」ではありません)の六声はどの曲も素晴らしいですが、先週の「神の御子は今宵しも」とこの曲では特に凄いなあといつも思います。ちなみにこの曲、作曲はメンデルスゾーンらしいです。この曲はメロディを聞いたなら誰でもが、「ああ聞いたことある!」と言う様な、非常に有名な曲です。

【4.Plese come home for Christmas (Bon Jovi)】
 収録アルバム「A very special Christmas 2」。NYC在住だった画家、故キース・へリング作と思われるイラストがジャケットのクリスマスCDです。ボン・ジョビのファンのリスナーの方、お待たせしました。やっとここに彼らの曲を書けることができましたよ!この曲は元々チャーリーブラウン(スヌーピーじゃありません)作のR&Bというかブルースというか、ですが、有名なのは1979年頃に発表されたイーグルスのシングル盤のテイクじゃないでしょうか?あの曲、CD化されてますか?B面は「ファンキー・ニュー・イヤー」だったんですけれども、僕は未だにドーナツ盤しか知らないのです。マニアの方々、どうぞ教えて下さい。これはボン・ジョビのテイクですが、あまり期待しないで来たが非常に良かった。ラストに弾くリッチー・サンボラのギターがとってもいいです。めっけもんでした。昔リッチー・サンボラとレス・ポールの二人のギター雑誌での対談を読んだことがありましたが、「5万人のアリーナで弾くときにこそ、ギタリストは自分の内面に集中して、内面に向かって真摯に弾かなければならない」という、とても精神的な事を語っていました。それで僕はこのリッチー・サンボラという男は本物だなと信用したという経緯があります。

5.飲んだくれトーク
 【You make me feel brand new (Stylistics)】
 邦題「誓い」。今日は「誓い」について語ったのでありました。それでは今邑tetsu海君、どうぞ。

【6.Jingle(わしら)】
 いつものやつで。

【7.Revelation (Yellowjackets & Take 6)】
 収録アルバム「Live wired」。イエロージャケッツがサックスに、これまでのアルトサックスのマーク・ルッソから、テナーサックスの名手ボブ・ミンツァーを迎えた直後に出たライブ・アルバムです。この曲はこのアルバムのラストに収録されていた曲です。これで2度目の録音で、イエロージャケッツが最初にこれを録音したのは、まだロベン・フォードと一緒にやっていた時代で、曲のテーマはロベンがギターで弾いておりました。マーク・ルッソもボブもそれぞれの時代にこの曲を吹いているらしいので、随分息の長い曲ですね。ピアノのイントロや、今回Take 6が歌詞付きで歌っているテイクからも分かるように、この曲はkbのラッセル・フェランテ作曲のゴスペルです。というかタイトルからして「Revelation」ですからね、もろゴスペル(神の福音)ですよね。「John's revelation」というと何だか分かりますか?「ヨハネの黙示録」ですよ。revelationは「新しい事実、発覚、啓示、お告げ、預言」というような意味があります。おそらくですが動詞reveal(明らかにする、暴露する)も同じ語源でしょう。何だかラジオ英語講座みたいになって来ました。

 欧米のホテルには必ずと行っていいほど聖書が部屋に置いてありますが、どこに行っても最後の章が「John's revelation」なので、僕は自分がキリスト教徒という訳ではないのですが、昔は聖書というとこの章を特に好んで読んでおりました。あの意味分からない、ホラーショーかSFのようなエキセントリックなシーンの後、最終戦争のようなすさまじいシーンが現れ、最後にはこれらが転じて福音の世となり、キリストが何千年ぶりかでこの地に再び姿を現すという、何だか映画のような章でした。しかし一説にはこの章は文字通りに読んでも訳が分からないようにヨハネが予め意図して難解に書いた暗喩で、正しく読めば、本当にヨハネが後世に伝えたかった事が分かり、それは今まで誰も知らなかった内容(しかし今では大多数の人々が気が付いている「福音」)だということです。さてそれは何か? こういう事は諸説紛々で面白いですね。

 さてこの曲、イエロージャケッツとTake 6との共演なのですが、最後の最後のTake 6のメンバーによるシャウトが、ゴスペル教会で黒人牧師が良くやる説教みたいで、迫力もあって格好いいですね。アドリブ・シャウトの意味は「僕は昔は盲目同然だったが、今は違う。やっと分かった。啓示を聞けて本当に嬉しい。」という様な事を言っています。こんなのライブで目の前でアドリブでシャウトかまされたら、誰だって大絶叫だと思いますよ本当。曲が終わった直後のお客さん達、大喜びです。

【9.The lord's prayer (Mehalia Jackson)】
 収録アルバム「エッセンシャル・マヘリア・ジャクソン」。曲の邦題は「主の祈り」。マヘリア・ジャクソンはゴスペル界で最も有名な女性シンガーの一人です。この曲は1958年のニューポート・ジャズ・フェスティバルで歌われ、映画「真夏の夜のジャズ」のラストを飾った、まさにその映画の、あのライブの音源そのものを、デジタル・リマスタリングされたテイクをご紹介しました。

 みなさん、「真夏の夜のジャズ」、是非一度ご覧になって下さい。凄い映画というか、ライブです。蒼々たるメンバーが出ています。チャック・ベリー、サッチモ、モンク、アニタ・オデイ、そして映画での大トリが彼女マヘリア・ジャクソン。
 彼女は映画では合計3曲歌うんですが、どれもピアノとオルガンの伴奏のみのシンプルなものなのですが、それでも彼女の歌の迫力がすんごいんです。でっぷり太った黒人のおばはんが歩いてきたなあと思ったら、巨体を揺すって凄い迫力で歌い出す。しかも全曲がゴスペルで、「皆んなが天国のことを話してる~」とか、「雨が降ってきたよ 恵みの雨が」とか、全編「神」。見ていた白人の観客は最初は「あん?何だあのオバハン?」という感じで雲子座りでハスに構えて見ているんですが、マヘリア・ジャクソンが歌い出した瞬間、みんな雷に打たれたようにビクンとなり、ついで2曲目では白人突っ張り・カップルも踊り出しちゃったりして。手拍子を打つは、「おい、あいつスゲエぞお!」と隣のダチに叫んで大喜びするわで、もう大騒ぎなんです。

 マヘリアは2曲目の「雨が降ったよ」を歌い終えた後に大熱狂で拍手する観客の嵐のような歓声に笑いながらもとてもビックリして言います。「You make me feel like I'm a star.」(おお、ここで今邑tetsu海君の選曲との、微妙なシンクロニシティが!)

 そして最後の最後にピアノのイントロが静かに始まって、大騒ぎの観客を前にこの「主の祈り」の出だしが始まるのです。(これは一部、古い英語です)
 
The lord's prayer

 Our Father
 Which art in heaven
 Hallowed be
 Thy name

 Thy kingdom come
 Thy will be done
 In earth as it is
 in heaven
 
 Give us this day
 Our daily bread

 And forgive us our debts
 As we forgive us our debtors
 And lead us not into temptation
 But deliver us from evil

 For thine is the kingdom
 And the power
 And the glory,

 forever,
 Amen

 全身全霊でこの曲を腹の底から歌い込んだマヘリアは、歌が終わるとまた素の人間に戻って、まるで最後の覚悟を決めて無敵の武士となって単身敵陣に切り込んで行った古武士がふと一瞬我に返るように、先程までの気合いの入った戦士のような顔から破顔一笑、少女っぽい笑顔でにこりと微笑むと、先程の数倍の大歓声に沸き返っている観客を見て、あーどうしようー、わたし家に帰れるかしら?という様に天を見上げて、確か両手を、水色のワンピースの胸元で、仏像を拝むように組んでいたような気がします。彼女は歌い終わった後は、ずーっと微笑んでおりました。

 僕はこの映画を見た後、腰が砕けて立てませんでした。遠くに古い型の車が埃っぽい道路を走り去り、映画のタイトルが英語で画面に現れましたが(「Jazz on a summer's day」。「夜」ではなく「夏の日」だったんです原題では)、それらもその時はぼーっと見ているだけで、ほとんど目に入りませんでした。ひたすらマヘリア・ジャクソンの凄い歌を聴いたことの感動に浸っておりました。

 僕がこのリバイバル映画を見てから早20年が過ぎようとしていますが、こうして書いている内に、まだあのときの感動が蘇って来ます。
 マヘリアは既にこの世を去り、今はこの曲や、この映画のことを知る人も少なくなりましたが、それでも僕はこの曲、この映画は、長く後世に伝えて行かねばならないなあと思っています。何故なら時空を越えて僕らの胸に突き刺さる、本物中の本物の音楽だからです。
 今回のクリスマス特集の本当の目的は、この曲を熱海湯河原のみなさんに聴いて頂くこと。この曲を日本中の、世界にいる日本語が分かる方々に、もう一度注目して聞いて頂くことにあるのかも知れません。

 「The lord's prayer」は1980年代後半、ラリー・カールトンが生ギター・アルバム「Alone/But never alone」のA面ラストで、生ギター・インストで録音していますが、おそらくこのニューポート・ジャズ・フェスティバルでのマヘリア・ジャクソンのテイクに触発されての録音だと思います。このテイクのラリーの演奏も非常に崇高な、是非皆さんに聞いて頂きたい演奏です。
 
【10.Close to home (Lyle Mays)】
 収録アルバム「Lyle Mays」。番組は終わって、ラストのラストのエンディングでつなぎのように流した曲です。ライル・メイズの1980年代後半に出したソロ・アルバム第一弾のラストに収録されていた曲。家に帰る、あるいは故郷に帰る足取りのようなものが感じられる曲です。僕らは僕らが本来属していた「故郷」に戻っている最中なんだろうか?或いはそこからどんどんと遠ざかりつつあるんだろうか?そんな事を思いながら収録しました。

 クリスマス特集、いかがでしたか?絶妙のトークとは裏腹に、音楽はかなり厳選してお届けしました。少なくとも他局では絶対に聞けない「本物」をお送りしようと努力致しました。キリスト教徒でもない私が色々と失礼致しました。それではまた来週。

 ps. みなさん、今日は冬至ですよ。キリスト教以前の西洋では、「死と再生の日」。今日が一年のうちで一番、昼が短く、夜が長い日でした。明日からやっと少しずつ、今まで短かった昼が、日一日と少しずつ長くなりますよ。今晩は「ゆず湯」に入りましょうね!暖まりますよ!年に一回、「冬至」の今日だけの特典ですよ!

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